検査
血液アレルギー検査(MAST36)全36項目を詳しく解説
- 公開日
- 執筆
- 石塚 理人
「アレルギー検査を受けたら、いくつも陽性になっていた」
「ハンノキって何?」
「大豆が陽性だけど、豆腐は普通に食べています」
血液アレルギー検査(MAST36)は、少量の採血で36種類のアレルゲンに対する特異的IgE抗体を一度に調べる血液検査です。MAST36の結果を見ると、聞き慣れない名前や、どう解釈したらよいのか分からない項目がたくさん出てきます。
ただし、最初に一つとても大切なことがあります。この検査結果だけで、「アレルギーがある・ない」を確定することはできません。検査が陽性だからといって、必ずその物質でアレルギー症状が出るわけではありません。逆に、検査が陰性でも、実際にその物質を食べたり触れたりしたときに毎回症状が出るのであれば、その物質は避けた方がよい場合もあります。
MAST36で測定しているのは、その物質に対する特異的IgE抗体です。特異的IgEが陽性であることは、そのアレルゲンに対して体が「感作」されていることを示しますが、実際に症状が出る「臨床的アレルギー」とは必ずしも一致しません。
そのためMAST36は、「現在どのような症状があり、いつ、何を食べた・触れた・吸い込んだときに症状が出たのか」という情報と組み合わせて、原因となるアレルゲンを推測するための補助資料として考えるのが大切です。
一方で、検査結果を正しく理解するためには、
- 「そのアレルゲンがどこに存在するのか」
- 「どのような症状を起こすのか」
- 「ほかのアレルゲンと交差反応することがあるのか」
を知っておくことがとても役立ちます。
そこでこの記事では、MAST36の36項目を、実際の検査結果の並びに沿って、写真を交えながら一つずつ解説していきます。
ぜひご自身の検査結果と見比べながら読んでみてください。
① 季節性アレルゲン(花粉)8項目
花粉症はスギだけではありません。
春のスギ・ヒノキ、初夏のイネ科、秋のブタクサやヨモギなど、季節によって飛んでいる花粉は変わります。
「毎年5月になると鼻水が出る」
「秋になると目がかゆい」
というように、症状が出る時期は原因を考える重要な手掛かりになります。
花粉カレンダー

飛散時期には地域差があります。ここでは主に関東地方を目安にしています。シラカンバは北海道・北日本で特に重要な花粉です。
花粉を避けるには?
花粉症では、薬を使うだけでなく、吸い込む花粉の量を減らすことも大切です。
- 花粉の多い日はマスクや眼鏡を使用する
- 帰宅したら衣服についた花粉を落とす
- 手洗い、洗顔をする
- 飛散量が多い日は洗濯物や布団の外干しを控える
- 草本花粉が原因の場合は、飛散時期に河川敷や草むらへ近づかない
といった方法があります。
1.オオアワガエリ

オオアワガエリはイネ科の多年草で、牧草として利用される植物です。
①いつ多い?
主に5~8月頃です。特に初夏に花粉が多くなります。
②どこに生えている?
ヨーロッパ原産で、牧草として導入され、現在は全国の道ばたや河川敷などに野生化しています。寒さに強く、特に北海道では牧草として広く栽培されています。
牧草地、草地、道路の法面などにみられます。牧草として栽培されているものが周囲へ広がっている場合もあります。
オオアワガエリなどイネ科花粉症では、他のイネ科花粉と交差反応しやすく、メロン・スイカなどのウリ科果物、トマト、キウイなどを食べたときに口や喉がかゆくなるPFAS(花粉-食物アレルギー症候群)との関連も知られています。
ポイント:スギ花粉の季節が終わった後も、5~7月頃まで症状が続く方ではイネ科花粉も考えます。
2.カモガヤ

カモガヤもオオアワガエリと同じイネ科です。牧草として日本に導入され、現在では各地で野生化しています。
①いつ多い?
主に5~7月頃です。
②どこに生えている?
日本各地に分布しています。都市近郊の道路脇や河川敷でもよくみられます。
道端、河川敷、公園、空き地、草地など、日常生活でもかなり身近なところに生えています。
オオアワガエリなど他のイネ科花粉とは交差反応しやすく、メロン・スイカなどのウリ科果物、トマト、キウイなどを食べたときに口や喉がかゆくなるPFAS(花粉-食物アレルギー症候群)との関連も知られています。
ポイント:オオアワガエリと同じイネ科です。両方の検査が陽性になることも珍しくありません。
3.ブタクサ

ブタクサはキク科の外来植物で、北米原産です。
①いつ多い?
8~10月頃で、特に9月前後が中心です。
②どこに生えている?
北海道から九州まで広く分布しています。特に都市部の空き地や河川敷でもよくみられます。
河川敷、空き地、道路脇、造成地などに生えます。
ブタクサ花粉症では、メロン、スイカ、キュウリ、ズッキーニなどのウリ科植物や、バナナを食べたときに口や喉がかゆくなるPFAS(花粉-食物アレルギー症候群)が知られています。
メロン・スイカなどのウリ科で起こるPFASは、多くの植物に共通するタンパク質(プロフィリン)が関係していることが多く、イネ科・ブタクサのどちらの花粉症でもみられます。
ポイント:夏の終わりから秋に鼻炎が出る方では、河川敷や空き地に多いブタクサに注意します。
4.ヨモギ

ヨモギも秋の花粉症の代表です。
①いつ多い?
8~10月頃です。
②どこに生えている?
ほぼ全国に分布しており、日本では非常に身近な植物です。
道端、空き地、土手、河川敷などに普通に生えています。
ヨモギ花粉症では、セロリ、ニンジンなどのセリ科野菜や、クミン、コリアンダー、フェンネルなどのスパイスでPFAS(花粉-食物アレルギー症候群)が起こることがあります。
ポイント:秋の花粉症に加えて、セロリ・ニンジン・スパイス類で口や喉がかゆくなる方は注意します。
5.スギ

日本でもっともよく知られている花粉症の原因です。
①いつ多い?
関東地方では2月頃から飛び始め、3月にピークを迎え、4月頃まで多く飛散します。
②どこに生えている?
北海道の一部と沖縄を除き、日本各地に広く植林されています。特に本州では非常に身近な樹木です。山間部のスギ林が中心です。
では、なぜ日本にはこれほどたくさんのスギがあるのでしょうか。
戦中から戦後にかけて、日本では大量の木材が必要となり、多くの森林が伐採されました。その後、森林を回復させるとともに、高度経済成長期に増加した建築用木材の需要に対応するため、大規模な植林が行われました。そこで多く植えられたのがスギです。スギは日本在来の樹木で、成長が比較的早く、まっすぐ育つため、建築材として使いやすいという特徴がありました。
ところが、スギは植えた直後から大量の花粉を飛ばすわけではありません。戦後に大量に植えられたスギが1970年代以降に成熟し、大量の花粉を飛ばすようになったことが、日本でスギ花粉症が増加した背景の一つと考えられています。
スギ花粉症では、トマトなどでPFAS(花粉-食物アレルギー症候群)が起こることもあります。
また、スギ花粉症には舌下免疫療法があります。毎日少量のスギ花粉アレルゲンを舌の下から投与し、数年間かけて体をアレルゲンに慣らしていく治療です。
ポイント:日本でもっともよく知られている花粉症です。症状を抑える薬だけでなく、適応があれば舌下免疫療法という選択肢もあります。
6.ヒノキ

ヒノキはスギと同じヒノキ科の樹木です。
①いつ多い?
スギより少し遅く、3月後半から増え始め、4月頃がピークです。5月頃まで続くことがあります。
②どこに生えている?
本州、四国、九州を中心に広く植林されています。特に西日本では重要な花粉です。主に山間部の人工林です。
スギとヒノキの主要アレルゲンには共通する部分があるため、両方の検査が陽性になることがあります。
ポイント:スギ花粉のピークを過ぎても症状が長引く場合は、ヒノキにも注意します。
7.ハンノキ

ハンノキはカバノキ科の樹木です。
①いつ多い?
関東では2~4月頃が中心です。
②どこに生えている?
北海道から九州まで広く分布しています。
湿地、沼地、水辺、湿った低地を好みます。
ハンノキはMAST36の中でも、食物アレルギーとの関連を考えるうえで重要な項目です。
ハンノキなどカバノキ科花粉に感作されている方では、リンゴ、モモ、サクランボ、大豆などでPFAS(花粉-食物アレルギー症候群)が起こることがあります。
特に大豆との関係で重要なのがGly m 4です。Gly m 4は大豆に含まれるPR-10というグループのタンパク質で、カバノキ科花粉に含まれるタンパク質と構造が似ています。そのため、花粉に対して作られたIgEがGly m 4にも反応してしまうことがあります。
このタイプでは、豆乳、湯葉、おぼろ豆腐などで症状が出る一方、味噌、納豆などの発酵食品は食べられることがあります。
Gly m 4のように、食品全体ではなく原因となる特定のタンパク質を調べる検査をアレルゲンコンポーネント検査といいます。MAST36検査後に行う、こうしたより詳しい検査については改めて解説します。
ポイント:豆乳やモモ、リンゴなどで症状がある場合には、食物の項目だけでなくハンノキの結果も確認します。
8.シラカンバ

シラカンバ、いわゆる白樺もハンノキと同じカバノキ科です。
①いつ多い?
北海道では4月後半から飛び始め、5~6月頃が中心です。
②どこに生えている?
特に北海道で重要です。東北地方や本州の標高の高い地域にも分布します。
冷涼な地域の林や山地に多くみられます。
シラカンバ花粉症でも、リンゴ、モモ、サクランボ、大豆などとのPFAS(花粉-食物アレルギー症候群)がよくみられます。
また、シラカンバの代表的なアレルゲンであるBet v 1と、大豆のGly m 4は同じPR-10ファミリーに属し、構造が似ているため交差反応します。そのため、ハンノキ花粉症の時と同様に、豆乳、湯葉、おぼろ豆腐等へのアレルギーが出る場合があります。
ポイント:北海道・北日本で春から初夏に症状がある方では重要です。モモ・リンゴ・豆乳などで症状がある場合にも結果を確認します。
② 通年性アレルゲン 7項目
通年性アレルゲンでは、「何月に症状があるか」よりも、「どこで過ごしたときに症状が悪くなるか」が重要になります。
9.コナヒョウヒダニ

通年性アレルギー性鼻炎や気管支喘息の代表的な原因です。
①どこで触れる?
布団、マットレス、枕、カーペット、布製ソファ、ぬいぐるみなどです。
問題になるのはダニそのものだけでなく、糞や死骸に含まれるアレルゲンです。
コナヒョウヒダニとよく似たダニにヤケヒョウヒダニがあります。両者はアレルゲンの構造が非常によく似ており、強い交差反応があります。
コナヒョウヒダニは比較的乾燥した環境にも耐えやすく、ヤケヒョウヒダニはより湿度の高い環境を好む傾向があります。
②どう避ける?
- 寝具を定期的に洗濯・乾燥する
- 布団やマットレスを中心に掃除する
- 室内の湿度を上げすぎない
- カーペットや布製品を増やしすぎない
などが基本です。
ダニ抗原によるアレルギー性鼻炎には、ダニのアレルゲンを含む舌下錠を用いる舌下免疫療法があります。この舌下錠にはコナヒョウヒダニとヤケヒョウヒダニの両方に由来するアレルゲンが含まれています。
ポイント:一年中鼻炎がある、朝起きた直後に症状が強い、布団に入ると悪化する方では重要です。原因がダニと確認できれば、舌下免疫療法も選択肢になります。
10.ハウスダストⅠ

ハウスダストは一つの物質ではありません。室内の埃の中には、
- ダニやその糞・死骸
- ペット由来物質
- 昆虫
- 繊維
- カビ
など、さまざまなものが含まれています。
①どこで触れる?
寝室、布団、カーペット、ソファ、クローゼットなど、埃がたまりやすいところです。
②どう避ける?
寝具や床を中心に定期的に掃除し、埃をためないことが基本です。
では、ハウスダストが陽性ならダニの舌下免疫療法を受けられるのでしょうか。ハウスダスト陽性だけでは、ダニの舌下免疫療法の適応とは判断しません。ダニの舌下免疫療法は「ダニ抗原によるアレルギー性鼻炎」に対する治療です。そのため、実際の鼻炎症状に加えて、ダニ特異的IgE検査などによって、病因アレルゲンがダニであることを確認する必要があります。MAST36では、隣の9番「コナヒョウヒダニ」の結果が参考になります。
ポイント:ハウスダストは混合物です。陽性の場合は、ダニ、ペット、カビなどの成分が原因と考えられます。
11.カンジダ

カンジダは酵母型真菌で、皮膚、口腔、消化管などにも普通に存在します。気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などの患者さんで陽性になることがあり、咳・喘鳴・鼻炎症状や皮膚炎の悪化との関連が報告されています。
①どこで触れる?
カンジダは皮膚や口腔、消化管などにも存在するため、完全に避けることのできるアレルゲンではありません。
②どう避ける?
スギ花粉やダニのように明確な回避対策を行う対象ではありません。検査結果だけを見て生活環境や食事を大きく変える必要も通常ありません。
カンジダ特異的IgEが陽性だからといって、体内でカンジダ感染症が起きているという意味ではありません。
ポイント:カンジダIgE陽性とカンジダ感染症は別の話です。検査陽性だけで抗真菌薬を使用するものではありません。
12.アルテルナリア

屋外環境に広く存在するカビです。
①どこで触れる?
土壌、植物、枯れ葉、腐植などに存在し、胞子が空気中を漂います。
②どう避ける?
室内の結露・湿気を減らし、目に見えるカビを放置しないことが基本です。
ポイント:喘息が湿気や季節によって悪化する方では、カビ感作も確認します。
13.アスペルギルス

環境中に非常に広く存在するカビです。
①どこで触れる?
土、埃、枯れ葉、堆肥、湿った室内、空調設備周辺などです。
②どう避ける?
室内の湿度や結露を減らし、カビを放置しないことが基本です。
喘息患者さんでアスペルギルスへの感作があり、画像異常や総IgE高値、好酸球増多などを伴う場合には、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)を考えることがあります。
ポイント:アスペルギルス陽性=ABPAではありません。症状、画像、採血などを組み合わせて診断します。
14.ネコ皮屑

一般には「猫の毛アレルギー」と呼ばれますが、毛そのものだけが原因ではありません。
①どこで触れる?
皮膚、フケ、唾液などに含まれるアレルゲンが、毛や室内の埃に付着します。
②どう避ける?
寝室へ入れない、床や布製品をこまめに掃除する、触った後に手を洗うなどが基本です。
ポイント:猫を直接触らなくても、猫のいる部屋に入るだけで症状が出ることがあります。
15.イヌ皮屑

犬でも皮膚、フケ、唾液などに含まれるタンパク質がアレルゲンになります。
①どこで触れる?
犬そのもの、寝床、ソファ、カーペットなどです。
②どう避ける?
寝室へ入れない、床や布製品を清潔にする、触れた後に手洗いをするなどが基本です。
ポイント:短毛種なら安全というわけではありません。検査結果より、実際に犬と接触したときに症状が出るかが重要です。
③ 食物系・その他 21項目
食物の項目では、
- どんな料理に含まれるか
- 加熱するとアレルギーが起こりにくくなるのか
を一緒にみていきます。
ただし、ここに記載する「加熱すると食べられることがある」は、自宅で試してよいという意味ではありません。
過去に強い症状があった場合は、自己判断で摂取せず医療機関へ相談してください。
16.小麦

①どんな料理に含まれる?
パン、うどん、パスタなどです。
②加熱すると?
パンや麺のように十分加熱していても小麦アレルギーは起こります。通常の加熱だけで安全になる食品ではありません。
通常の小麦アレルギーとは別に、小麦を食べた後に運動、飲酒、入浴、解熱鎮痛薬などが加わってアナフィラキシーを起こす小麦依存性運動誘発アナフィラキシーがあります。
この病型で重要なのがω-5グリアジン(Tri a 19)です。成人の小麦依存性運動誘発アナフィラキシーが疑われる場合に追加検査することがあります。
ポイント:パンや麺を普段食べられていても、食後の運動時だけ蕁麻疹や呼吸困難が出る場合には注意します。
17.大豆

①どんな料理に含まれる?
豆乳、豆腐、味噌などです。
②加熱すると?
大豆アレルギーの種類によって異なります。
ハンノキ・シラカンバ花粉との交差反応に関係するGly m 4は熱や加工の影響を受けやすいタンパク質です。そのため、豆乳では症状が出ても、発酵・加工された味噌や納豆などは食べられる方がいます。
ただしすべての大豆アレルギーがGly m 4によるものではないため、「加熱・加工すれば大丈夫」とは限りません。
Gly m 4は大豆アレルギー全体の代表ではなく、カバノキ科花粉症に関連する大豆アレルギーで特に重要なコンポーネントです。
ポイント:豆乳だけで症状が出る場合、大豆IgEが陰性でもハンノキ・シラカンバやGly m 4を調べる価値があります。
18.米

①どんな料理に含まれる?
ご飯、餅、米粉製品などです。
②加熱すると?
加熱によって一部のタンパク質の性質は変わりますが、加熱したご飯でもアレルギー症状が起こることはあります。
IgE型の米アレルギーは、卵・乳・小麦などに比べると多くありません。
検査陽性でも日常的に問題なくご飯を食べているのであれば、検査結果だけで除去する必要は通常ありません。
19.マグロ

①どんな料理に含まれる?
刺身、寿司、ツナなどです。
②加熱すると?
魚の主要アレルゲンの一つであるパルブアルブミンは比較的熱に強いため、加熱しても症状が出ることがあります。
また、マグロを食べた後の蕁麻疹では、魚そのもののアレルギーだけでなく、ヒスタミン食中毒やアニサキスアレルギーとの区別も重要です。
ポイント:魚を食べて症状が出たら、「魚」「アニサキス」「ヒスタミン」のどれが原因なのかを考えます。
20.サケ

①どんな料理に含まれる?
刺身、焼鮭、スモークサーモンなどです。
②加熱すると?
魚のアレルゲンは加熱しても残ることがあるため、焼けば必ず食べられるわけではありません。
なお、イクラはサケの卵ですが、サケの身とは原因となるアレルゲンが異なります。
ポイント:魚アレルギーは「魚全部」と一括りにせず、魚種ごとに実際の摂取歴を確認します。
21.エビ

①どんな料理に含まれる?
エビフライ、寿司、天ぷらなどです。
②加熱すると?
主要アレルゲンのトロポミオシンは熱に比較的強いため、加熱したエビでも症状が出ます。
カニとの交差反応もよくみられます。
イカ・タコ・貝類にもトロポミオシンがありますが、別の軟体動物で、エビアレルギーの人でも食べられることがあるため、検査陽性だけを理由にこれまで問題なく食べていた魚介類をすべて除去する必要はありません。
ポイント:エビ陽性だからといって、イカ・タコ・貝類まで一律に除去する必要があるとは限りません。
22.カニ

①どんな料理に含まれる?
ゆでガニ、カニ鍋、カニクリームコロッケなどです。
②加熱すると?
エビと同様にトロポミオシンが重要で、十分に加熱してもアレルゲン性は残ります。
ポイント:エビとカニは交差反応しやすいため、一方で症状がある場合はもう一方の摂取歴も確認します。
23.ミルク

①どんな料理に含まれる?
牛乳、チーズ、アイスクリームなどです。
②加熱すると?
牛乳に含まれるタンパク質のうち、加熱で変化しやすいものと、カゼインのように比較的熱に強いものがあります。
そのため、牛乳は飲めなくても、十分加熱した乳を含む焼き菓子を食べられる方もいますし、どちらも摂取できない方も居ます(医師の指示なく自宅で試すものではありません。)
ポイント:牛乳を飲むとお腹がゴロゴロするだけなら、牛乳アレルギーではなく乳糖不耐症の可能性もあります。
24.牛肉

①どんな料理に含まれる?
焼肉、牛丼、ハンバーグなどです。
②加熱すると?
原因となるタンパク質によって異なります。
特にα-Gal症候群では、十分に加熱した肉でも症状が出ることがあります。
ポイント:哺乳類肉を食べて数時間後に症状が出る場合には、α-Gal症候群という特殊な肉アレルギーも考えます。
25.鶏肉

①どんな料理に含まれる?
焼き鳥、唐揚げ、鶏スープなどです。
②加熱すると?
加熱で反応性が低下するタンパク質もありますが、鶏肉アレルギー全体として「加熱すれば安全」とは言えません。
ポイント:卵アレルギーだからといって、必ず鶏肉にもアレルギーがあるわけではありません。
26.卵白

①どんな料理に含まれる?
卵焼き、ゆで卵、ケーキなどです。
②加熱すると?
卵は加熱による違いが非常に重要です。
卵白の主要アレルゲンの一つであるオボアルブミンは加熱で変性しやすいため、生卵や半熟卵では症状が出ても、十分加熱した卵を食べられる方がいます。
一方、次に説明するオボムコイドは熱に比較的強いタンパク質です。
ポイント:卵白陽性=すべての卵料理を禁止、ではありません。加熱の程度とオボムコイドの結果が参考になります。
27.ソバ

①どんな料理に含まれる?
日本そば、そば茶、そば粉ガレットなどです。
②加熱すると?
ソバのアレルゲンは加熱しても十分残るため、ゆでたそばでも症状が起こります。
少量でもアナフィラキシーを起こすことがある食品です。
ポイント:実際に症状がある場合には、そば粉の混入や共用調理器具にも注意します。
28.ピーナッツ

①どんな料理に含まれる?
落花生、ピーナッツバター、菓子などです。
②加熱すると?
加熱や焙煎をしても安全になるとは限りません。むしろ通常の加工後でも十分にアレルゲン性が残ります。
必要に応じてAra h 2というコンポーネント特異的IgEを追加測定します。
ポイント:ピーナッツ陽性の場合、摂取歴と必要に応じAra h 2などを組み合わせて評価します。
29.オボムコイド

①どんな料理に含まれる?
ゆで卵、卵焼き、焼き菓子などです。
②加熱すると?
オボムコイドは卵白に含まれる主要アレルゲンで、加熱に比較的強いという特徴があります。
そのため、オボムコイド特異的IgEは、加熱した卵でも症状が出る可能性を考える際の参考になります。
ポイント:卵白とオボムコイドは、同じ卵を違う角度から評価する検査です。
30.ゴマ

①どんな料理に含まれる?
すりゴマ、ゴマだれ、ゴマ入り菓子などです。
②加熱すると?
ゴマは炒ったり加熱したりしてもアレルゲン性が残ります。
ポイント:ゴマそのものだけでなく、ゴマペーストやドレッシングなど見えにくい形でも使用されています。
31.キウイ

①どんな料理に含まれる?
生キウイ、フルーツサラダ、スムージーなどです。
②加熱すると?
花粉との交差反応によるPFAS(花粉-食物アレルギー症候群)では、原因タンパク質が熱に弱いため、生では症状が出ても加熱すると食べられることがあります。
ただしキウイアレルギーすべてがPFASとは限りません。
ポイント:キウイ陽性では、花粉症やラテックスアレルギーとの関連も確認します。
32.バナナ

①どんな料理に含まれる?
生バナナ、スムージー、デザートなどです。
②加熱すると?
花粉やラテックスとの交差反応が原因の場合、加熱で症状が出にくくなることがありますが、すべてのバナナアレルギーに当てはまるわけではありません。
ポイント:ブタクサとラテックスの結果も一緒に確認します。
33.モモ

①どんな料理に含まれる?
生モモ、ジュース、フルーツサラダなどです。
②加熱すると?
ハンノキ・シラカンバ花粉に関連するPFAS(花粉-食物アレルギー症候群)では、原因となるPR-10タンパク質は熱に弱いため、加熱したモモは食べられることがあります。
一方、モモにはPru p 3など熱に強く、全身性の症状に関係するアレルゲンもあります。そのため「加熱すれば必ず大丈夫」とは言えません。
ポイント:モモで症状がある場合は、ハンノキ・シラカンバも一緒に確認します。
34.トマト

①どんな料理に含まれる?
生トマト、トマトジュース、サラダなどです。
②加熱すると?
PFAS(花粉-食物アレルギー症候群)による場合には、生のトマトでは口がかゆくても、加熱したトマトソースやケチャップでは症状が出ないことがあります。
ポイント:「生だけダメ、加熱したものは大丈夫」という違いはPFASを考える重要な手掛かりです。
35.豚肉

①どんな料理に含まれる?
豚しゃぶ、とんかつ、ハムなどです。
②加熱すると?
原因によって違います。
猫アレルギーとの交差反応で起こるpork-cat syndromeでは、原因となる血清アルブミンが熱に弱いため、十分に加熱すると症状が出にくくなる場合があります。
一方、α-Gal症候群では加熱しても症状が起こることがあります。
ポイント:猫アレルギーがあり、豚肉で症状が出る場合にはpork-cat syndromeも考えます。
36.ラテックス

ラテックスは食物ではなく、天然ゴムに含まれるタンパク質です。
①どこで触れる?
ゴム手袋、風船、医療・歯科用ゴム製品などです。
接触した部分の蕁麻疹だけでなく、鼻炎、喘息、アナフィラキシーを起こすことがあります。
また、バナナ、キウイ、アボカド、クリなどとの交差反応があり、ラテックス-フルーツ症候群と呼ばれます。
ポイント:キウイやバナナとラテックスは一見無関係ですが、アレルゲンの交差反応でつながっています。
まとめ
MAST36は「36種類についてアレルギーがあるか、ないか」を決める検査ではありません。
大切なのは、
- 「いつ」
- 「どこで」
- 「何を食べた・触った・吸い込んだとき」
- 「どのような症状が出たか」
を検査結果と照らし合わせることです。
もし実際に症状があるようなら、MAST36の結果を手掛かりに、今後さらに原因となるアレルゲンを探していきます。
必要に応じて、単項目の特異的IgEや、Gly m 4、ω-5グリアジン、Ara h 2などのアレルゲンコンポーネント検査などを組み合わせて診断していきます。
MAST36は「36個の答えが出る検査」というより、自分のアレルギー症状の原因を探していくための手掛かりとして使う検査、と考えると分かりやすいと思います。