外来で高血圧の患者さんとお話ししていると、よくこんな質問を受けます。

「先生、年をとったら自然に血圧が上がるんですよね? それなのに、どうして薬で下げないといけないんですか?」

もっともな疑問だと思います。

「なぜ下げるのか」については、いずれまとめようと思いますが、答えは比較的はっきりしています。多くの臨床試験をまとめた研究では、収縮期血圧を10 mmHg下げるごとに、脳卒中や心筋梗塞などの主要な心血管イベントのリスクが相対的に約20%低下しました。[1]

では、そもそも、本当に人間は年をとると血圧が上がるのでしょうか? この記事では、日本人の年代別データと海外の研究から、加齢と血圧の関係を見ていきます。

本当に、年をとると血圧は上がるのでしょうか?

まず、日本人の実際のデータを見てみましょう。

厚生労働省の「令和6年 国民健康・栄養調査」には、日本人の平均血圧を男女・年代別にまとめたデータがあります。ここでは、血圧を下げる薬を使っていない人だけを集計した結果を見てみます。[2]

日本人の年代別の平均血圧を男女別に示した折れ線グラフ(血圧を下げる薬を使っていない人)。収縮期血圧は、男性が20代約115から70歳以上約134 mmHgへ、女性が20代約103から70歳以上約132 mmHgへ上がる。拡張期血圧は、男性が20代約72から50代約81 mmHgまで上がり70歳以上で約76 mmHgに、女性が20代約65から60代約76 mmHgまで上がり70歳以上で約74 mmHgに下がる。

※厚生労働省「令和6年国民健康・栄養調査報告」第24表の4より作成

グラフを見ると、特に女性では変化がよく分かります。

女性の収縮期血圧(上の血圧)の平均は、20代では約103 mmHgです。それが40代では112 mmHg、50代では119 mmHg、60代では126 mmHg、70歳以上では132 mmHgまで上がっています。[2]

男性は若い頃から女性より平均血圧が高く、年代間の差は女性より小さくなっています。それでも40代以降、収縮期血圧は高くなっていきます。[2]

一方、拡張期血圧(下の血圧)は、男性では50代、女性では60代を境に下がっています。[2] ある年齢で拡張期血圧が下がるのは、大動脈の硬化が関連していると言われています。[3,5]

もちろん、このデータは同じ人を何十年も追いかけた研究ではありません。また、血圧の薬を飲んでいる人を除いているため、すでに治療を受けている人の血圧はこの数字に入っていません。

それでも、現在の日本では、年齢が高い集団ほど収縮期血圧が高いという傾向は、はっきりしています。

同じ人を追いかけると? フラミンガム心臓研究

日本の統計は、ある時点でいろいろな年代の人を一度に測った「横断研究」です。今の30代と今の70代を比べているので、生まれた時代や育った環境の違いも、数字に混ざっている可能性があります。

これに対して、同じ人が30歳、40歳、50歳と年を重ねるにつれて、血圧がどう変わるかを見るのが「追跡研究」です。その代表が、米国のフラミンガム心臓研究(Framingham Heart Study)です。

1997年に発表された有名な解析では、2036人の血圧を2年ごとにくり返し測り、最長30年分のデータを調べています。血圧を下げる薬を使っている人のデータは除いています。[3]

その結果、収縮期血圧は30歳から84歳まで、年齢とともに上がり続けました。[3]

この解析では、50〜79歳のある時点の収縮期血圧で参加者を4つの群に分け、それぞれの群について、30代から80代までの血圧を年代ごとに平均しています。[3]

その時点で収縮期血圧が120 mmHg未満だった群では、30〜34歳で約111 mmHg、80〜84歳でも約125 mmHgと、上昇はゆるやかでした。一方、160 mmHg以上だった群では、30〜34歳ですでに約132 mmHgとやや高めで、80〜84歳には約166 mmHgまで上がっていました。[3]

つまり、分類時点で収縮期血圧が低かった群でも、年齢とともに収縮期血圧はある程度上がります。しかし、分類時点で収縮期血圧が高かった群は、若い頃からやや高めで、上がり方も急だったのです。[3,4]

では、世界のさまざまな集団で、年齢による血圧の上昇幅に違いはあるのでしょうか?

年齢による血圧の差が小さい集団もある

1980年代に行われた「INTERSALT(インターソルト)」という国際研究では、世界32か国・52地域の約1万人について、血圧や、24時間の尿に含まれるナトリウム(食塩の成分)などが調べられました。[6]

大部分の地域では、年齢が高くなるほど血圧も高くなっていました。

ところが、食塩の摂取量が非常に少ない4つの集団では、年齢が上がっても血圧がほとんど上がっていませんでした。これらの集団では血圧そのものも低く、高血圧はほとんど見られませんでした。[6,7]

その一つは、南米アマゾン地域に暮らすヤノマミ(Yanomami)の人々です。24時間の尿に含まれるナトリウムは平均0.9 mmol/日(食塩に換算すると約0.05 g)と、極めて少ない量でした。平均血圧は約96/61 mmHgです。肥満や高血圧は見られず、飲酒の習慣もありませんでした。そして、年齢が高い人ほど血圧が高い、という傾向も見られませんでした。[8]

狩猟・採集・農耕を中心とした生活を送るボリビアのチマネ(Tsimane)の人々でも、10年あたりの収縮期血圧の上昇は、男性でわずか約0.9 mmHg、女性でも約2.9 mmHgにとどまったという報告もあります。[9]

つまり、塩分摂取が少なく肥満も少ないなど、現代の都市生活とは異なる生活を送る集団では、年を重ねても血圧がほとんど上がらないことがあるということです。

食塩の摂取量が非常に少ない4集団を除いた48集団では、ナトリウムの排泄量が多い(食塩の摂取が多い)集団ほど、年齢に伴う血圧の上昇が大きかったです。また、肥満やお酒の飲み過ぎも、食塩とは別に血圧と関係していました。[6]

ですから、現在の私たちに見られる血圧の上昇は、加齢に伴う血管の変化に加え、食塩摂取や体重、身体活動、遺伝的な体質など、複数の要因が関わります。年をとることで、血圧が上がりやすい身体にはなります。そこに長年の食塩摂取や体重の増加、運動不足などが積み重なって、さらに血圧が上がっていくのかもしれません。

まとめ 「年をとると収縮期血圧は上がる」けれど、その幅は様々

日本では、実際に年齢が高いほど収縮期血圧は高いようです。

海外の追跡研究では、分類時点で収縮期血圧が高い群は、若い頃からやや高めで、年齢による上がり方もより急でした。

一方で、海外には年を重ねても血圧がほとんど上がらない集団も存在しました。

これらをまとめると、年をとると収縮期血圧は上がりやすくなるものの、どこまで上がるかは、人によっても暮らし方によっても大きく違うと言えそうです。「年をとる=必ず高血圧になる」わけではありません。加齢による身体の変化に、長年の食生活や体重、運動などの生活環境が重なって、血圧は上がっていくと考えるのが自然です。

また、分類時点で収縮期血圧が高かった群では、若い頃からやや高めで、上がり方も急でした。若いうちから自分の血圧を知っておくことにも、意味がありそうです。

ですから、「年だから仕方がない」と考えて、血圧が高い状態を放置する必要はありません。減塩などの生活習慣を見直すとともに、家庭で血圧を測って記録しましょう。

参考文献

  1. Ettehad D, et al. Blood pressure lowering for prevention of cardiovascular disease and death: a systematic review and meta-analysis. Lancet. 2016;387:957-967.
  2. 厚生労働省.令和6年国民健康・栄養調査報告 第24表の4「収縮期(最高)・拡張期(最低)血圧の平均値及び標準偏差(血圧を下げる薬の使用者除外)」
  3. Franklin SS, et al. Hemodynamic patterns of age-related changes in blood pressure. The Framingham Heart Study. Circulation. 1997;96:308-315.
  4. Nilsson PM, Khalili P, Franklin SS. Blood pressure and pulse wave velocity as metrics for evaluating pathologic ageing of the cardiovascular system. Blood Press. 2014;23:17-30.
  5. Smulyan H, Safar ME. Systolic Blood Pressure Revisited. J Am Coll Cardiol. 1997;29:1407-1413.
  6. INTERSALT Cooperative Research Group. Intersalt: an international study of electrolyte excretion and blood pressure. BMJ. 1988;297:319-328.
  7. Carvalho JJ, et al. Blood pressure in four remote populations in the INTERSALT Study. Hypertension. 1989;14:238-246.
  8. Mancilha-Carvalho JJ, et al. Blood pressure and electrolyte excretion in the Yanomamo Indians, an isolated population. J Hum Hypertens. 1989;3:309-314.
  9. Gurven M, et al. Does blood pressure inevitably rise with age?: longitudinal evidence among forager-horticulturalists. Hypertension. 2012;60:25-33.